原田くんからの謎の視線を受けながら、授業始めの挨拶をした。
「おーし。教科書124ページを開いて音読しろー」
昨日の続きかぁ。
なんて思いながら教科書を開くと、隣からの視線はまた鋭さを増した。
…はて。
もしかしてもしかすると…
「教科書ないの?」
「………」
「一緒にみます?」
「……え」
「いや、嫌ならいいんだけど」
ページに折り目をつけながら言うと、隣の原田くんは固まった。
「…………て……さい」
「ん?」
「…見せてください…って、何度言えばわかるんですか」
…いや、そんな何度も言ってないよね?
私が気づかなかっただけで、もしかしたら何度も言ったかもしれないけど…
苦笑いを浮かべながら、私と原田くんの席の間に教科書を置いた。
だけど、原田くんは教科書を見ずに窓の外を見ていた。