「嘘?!圏外だったはずなのに。」


突然鳴った音の主を慌ててポケットから取り出す。

着信の相手は千草だった。


「もしもし?ちーちゃん?」

「何?それ。」


怪訝な顔で覗き込む沖田を無視して必死に呼び掛ける。


「ちーちゃん?聞こえる?」

「叶ちゃん?今ドコにいんの?」

「どこって……」

「ま、いっか。あのさ、今から飲みに来れない?」


千草の呑気な声とは裏腹に叶は焦っていた。

奇跡的に繋がった電波はいつ切れるか分からない。

そもそもこの時代に電波がある訳もないのだから。


「飲みはムリなんだけど、お願いがあるの!家の近くの公園……ちょ、ちーちゃん?!」

「え?…………叶ち……聞こえ…………」

「うそっ!ちょっと!もしもし?もしもし?ちーちゃん!」


再び圏外なったスマホを呆然と見つめた。


「切れちゃった……なん……で?」


叶はその場に崩れ落ちた。