暫くするとその歌声が止む。

辺りが静寂に包まれると仔猫の搔く音と、同時に発した鳴き声が叶にも届いた様だ。


「ネコちゃん?」


叶が閉ざされた扉に手を掛けた音がする。

沖田は仔猫を抱き上げるとその扉を開けた。


「おいでよ」


そう言うと叶の手を取り歩き出す。


「あ、あの……」


戸惑う叶を余所に沖田は歩みを止めず、屯所内に足を踏み入れた。


「ちょっと待ってください!」


叶は敷居を跨ぐ寸ででその手を振り払う。

不思議そうな、少し怒った様な表情を見せる沖田。


「君さ、今の立場分かってる?」

「……いえ。」

「だろうね。」


そんな事言われたって分かる訳ないじゃない……こんな非現実的な事…………


「取り敢えずさ、ちゃんと説明した方が良いと思うんだよね。じゃなきゃ殺られちゃうよ?」


殺られる?殺されるって事?!

”殺る”のはまるで沖田である様な言い方に聞こえ叶は”誰”に?と聞く事は出来なかった。