闇に包まれた蔵の中で叶は膝を抱え座っていた。
この先の自らに起こる事を想像すればする程、良い方へと進む気がしない。
山中を走った足先は擦り傷だらけでジンジンと痛み、暗闇が余計にマイナス思考にしていく。
ふとポケットの中に残された物を見つける。
「あ、スマホ……これだけはあったんだ。」
スマートホンの画面の光が異様に眩しく見えた。
「やっぱ圏外かぁ。」
何となく振ってみる。
「……圏外…………。音楽は聴ける?充電厳しいかな。」
プレイヤーを再生してみる。
澄んだ声のバラードが蔵に響き渡った。
叶はじっと耳を傾けていたが、そのうちに口ずさみ始めた。



