「土方さん、負けましたね。」
未だ笑いながら沖田が土方に言う。
突然の笑い声に叶の手も止まった。
「叶ちゃんさ、君の言い分は正しいと思いうよ。けど京の治安を守る側としてはそうもいかないんだよね。」
ー京の治安?京?ずいぶんおかしな夢……夢だからって変な人に啖呵きっちゃったし……ー
ボーッと沖田を見る。
ーあぁ、そっか!今日の企画は歴史物だったからか!ー
ー夢で殺されても……起きたら現実……か。だったらさっさと目覚めちゃいたいなぁー
この場から離れてしまえば目が覚めると叶は思えた。
散らばった荷物をかき集め、袋に詰め込む。
足元で擦り寄る仔猫を抱き上げるとその場を後にしようとする。
「おい、総司。お前一向に言うことを聞かねえあの女を気に入ったみてえじゃねえか。だったらお前がどうにかしろよ。」
「はぁ……初めてですね、あんな子は。」
土方が凄んでも、沖田が諭しても無意味な叶の行動に、二人とも半ば呆れ気味だ。
「叶ちゃん、そんな珍妙な格好で動くと危ないよ。」
沖田が叶の肩を掴み、止めた。
ー珍妙?この格好がおかしいってこと?ー
掴まれた肩に人肌の温かさを感じる。
ーどうしてこんなにリアルっぽいの?…………ホントに夢?ー
ふと疑問に思うと叶は急に肌寒さを感じた。
「もしかして寒いの?もうじき陽もおちるし、春とはいえまだ夜は冷え込むし、そんな格好じゃ体に悪いよ?」
「春?!」
沖田の言葉に驚きの声をあげた。



