久馬くんがいない夜は少し不安だったけど、哀しい夢は見なかった。


競馬開催で、人手が減ってしまう土日は、厩舎でお手伝い。


「もうすぐオレも叔父さんだねぇ…」


厩務員の雅人くんが、声をかけてくれた。雅人くん…なんて呼んでいるけど、7歳上の実兄。ちょうど久馬くんの2番目のお兄さんと同じ年で、仲良くしていた。


「未だに『あの』久馬との子どもだと信じがたいけどね」


「どういう意味!?」


聞き返すと、ハハハと笑って行ってしまった。


久馬くんって…結婚しなさそうなイメージなのかな?さらに子ども…となると尚更!?


たしかに、久馬くんが『いないいないばぁ』とかやってるのは想像できない…。


「ふふふふ」


お腹をさすりながら笑っていると、それに応えるように激しい胎動が。


「ベビーもそう思う?」

そうお腹に話しかけるとまた胎動を感じた。


今夜も、哀しい夢は見ないだろうと思った。