結局その日は教室で無事に?お昼を過ごした。
もちろん、午後の授業もお腹の満腹度と暖かい日差しに勝つことが出来ず、天使に《寝ちゃえよ》と囁かれて負けた。

「佐倉~、少し残れ~」

担任のそう言われて、教室にいた。
大人しく席に座る自分は偉いと思う、だって寝てないし?

「これに応募してみないか?」

突き出された紙を見ると、わたしはため息をついた。
全国のピアノの応募用紙…、

「少し考えさしてください、それでは失礼します」

そう言って、静かに席を立ち突き出された紙をカバンに入れながら教室を出た。
少し明るい赤色な空を見上げながら誰もいない校舎を歩いた。

辿り着いた場所は音楽室、自然にピアノへ腕が伸びる。
いつもと変わらないメロディー、同じテンポ、同じ指先。
同じところで指が動かなくなる、重い重低音、いろいろな和音。

「最後まで弾けるなら弾きたい…」

ピアノの鍵盤に頬から伝わる涙が落ちる。
ハラリハラリと落ちる涙は、止まることを知らなくて溢れ出てくることしか知らない。