「いいよ、話さないで…今の志乃をわたし知ってるもん」

口ではそう言ってるけど本当は志乃の昔を知りたくて、みんなが知っててわたしが知らないのが悔しくて…。

でも、志乃がそんなに辛いなら無理には聞きたくなくて…だから志乃がいつか話してくれるのを待つことしか出来なくて…。

頭の中でごちゃごちゃしてパンクになりそうで、自然と涙が出てきて…自分が泣くのもなんか気が引けて必死で涙を拭う。

「今日、放課後ひま?」

頭上から志乃の声がして、顔を上にあげるといつもの微笑みで聞いてくる志乃にコクン…と小さく頷いた。
志乃はわたしの頭を優しくポンポンと叩いて、自分の紙をガシガシと掻いて教室に入っていった。
わたしはただボォ…と志乃のノソノソとした気だるそうな後姿を呆然と見ていた。

「日和?」

はっとして声が向くほうを見たら数歩足を進めて行く咲羅。
そういえば…と思い出してクスクスと笑うと案の定、咲羅の顔が歪んでいく。

「咲羅は待ってくれないよね」

そこが咲羅の特徴かと納得する。呆然としている咲羅の横を通り過ぎる。

「ちょっとっ!どういう事よ!?」

後ろのほうで咲羅が怒ってるけど、知らない振りをして歩いた。