「航ちゃん、」
服の裾を少し引っ張る。
「ん?」
「早退させちゃってごめんね?」
「別に。」
海渡と、波流には、航ちゃんが、早退して帰ることは伝えてある。
だから、落ち合える、はず。
おばさんにも連絡済みだし、みんなご飯食べて行きなさいって言われたし…。
問題は、航ちゃんの反応だけだ
「…悪りぃ。」
「?」
何がと、続けようとして、口を噤む。
「歩くペース、速いよな。」
変わった。
航ちゃんは、今までそんなこと気にしたことなかった。
逆だった。
速く来いよって言われて、いつも私が追いかけて…。
「大丈夫だよ!」
そう言って、航ちゃんの横まで走っていく。
本当は少し速いし、後ろ姿眺めながら歩きたかったけど、気にしてるみたいだから、隣へ行く。
「お前の大丈夫は大丈夫じゃねーだろ?」
軽く含み笑いをして、航ちゃんは、歩くスピードを緩めた。
このまま、時間が続けばいいのにな。
航ちゃんと、二人の時間が昔から一番心地よくて好き。


