飛べないイルカ


「棗先輩、プール開けときました。」

いつもチャラい柴田先輩が、棗先輩と呼ばれた先輩に笑いかける。

「さんきゅー。柴田。ぁ岬さん、プールサイドに連れて行ってやって。貸したジャージ、スカートのしたにはいといてね。」

棗先輩は、私にそう言うと、まっすぐに更衣室へと歩いて行った。

「では、お嬢さん、行きますよ。」

確実に、設備のいいプール。

昨日、航ちゃんについてきたばかりの場所。

「深海ちゃん、マネさんやるの?」

先ほどとは違う態度。

きっと先輩たちがいたからかな。

「今日の見学見て決めるつもりです。」

「こんなこと言いにくいんだけどさ…航のに見慣れてる深海ちゃんには、棗先輩たちの演技、物足りないと思う。」


え…?

確かお兄ちゃんの時はすごくよかったって…。

毎年4回くらい発表会していたって…。

「何かが、足りないんだ。」

何かが…たりない。

今からそれがわかるんだ…。