シンクロを見た後の顔だ。

「おかえり。航も、深海ちゃんも、遅かったじゃない。深海ちゃん、お風呂入ってらっしゃい。」

おばさんの言葉に、深海は、軽く頷く。

「水希ちゃん、あのねっ、」

「深海、言ったら二度と連れてかねーぞ。」

「なんのこと?あたしは、航ちゃんが、みんなにアイスを買ってきたことを言おうとしたんだよ?」

無邪気に深海は話す。

可愛らしい。


妹みたいで、妹以上の存在。

「じゃぁ、お風呂もらいます。」

俺は航に歩み寄る。

何をしてたのかを聞きたい。

「何してたんだ?」

「ランニングだっつったろ?」

「ただのランニングなら深海の顔があんなに明るくなるわけがない。」

深海は、誰よりも男子シンクロを見ることが大好きなんだ。

それだけは俺は自信を持って言い切れる。

「別になんでもねーよ。」

あくまでも隠し通したいらしい。

でも俺だって、気になるからにはあとには引けない。

「航ちゃん、海渡、アイスだよ。」

波流が、俺たちの剣幕を止めるように入り込む。

いらねぇ、と言いかけて、そのアイスが俺の好きなバニラ味だということに気がついた。

俺の好きな味を知ってるのは、航だけ。深海の前でアイスを食べることなんてないし、今までのシンクロの後は適当に食ってた。

航が、わざわざ、選んだのだろうか…?

よくみると、波流は、チョコミントだ。航は、抹茶。

それぞれの好きなもの…


これだから、航のことは嫌いになりきれない。