「もしかして、飛べないの?」
「航の弱虫ー。」
半分追い詰めるように航ちゃんに問う。
それを何時か、繰り返した。
「っ、わかったよ。飛べばいいんだろ?飛べば!」
そう言って、航ちゃんは、準備をする。
そして、航ちゃんは
飛ばなかった。
飛ぼうとはしたんだと思う。でも、
飛んだというより顔を出しただけ。
たった、それだけ。
「わかっただろ…。俺は飛びたくねぇんだよ。」
私が大好きだった、イルカのようなジャンプは、
なくなった。
航ちゃんは飛ばないイルカになってしまった。
「ご、ごめんね。」
「別にいい。帰るぞ。ロビーで待ってろ。」
まだ、来て1時間。
2時間練習、しないのかな。
「行こうか。深海ちゃん。」
「、はい。」
柴田先輩について、私はプールサイドを歩いた。


