飛べないイルカ


「ランニング、してくる。」

航ちゃんが、そう言って、玄関を出て行った。

ランニングの割りには大きな荷物…


「おばさん、航ちゃん、」

「ランニングのときいつもあんな大きな荷物、持って行ってるわよ?それに、ランニングのはずが、2時間は帰ってこないのよねぇ…」

ランニングに二時間もかかるはずがない。

しかも、今、海渡と、波流は、お風呂に入りに銭湯にいってる。

私は急いでジャージに着替えた。

「おばさん、私もランニングしてくる!」

7:00。ちょっと遅いけど、今まで塾に行く時に家を出ていた時間。

だから、大丈夫。
「気をつけてね?深海ちゃん、」

「はぁーい」

そう言って、私は、航ちゃんが、昼間に言っていた、柴田先輩の家のプールをめがけて走った。

歩けば10分かかる距離。

走れば5分で走り切れた。

まぁまぁ、いい時間。

「!航ちゃん!」

「深海?」

航ちゃんと、柴田先輩が、同時に振り返った。

「深海ちゃん、俺に会いに来たの?」

相変わらずのナルシ発言をかます柴田先輩を無視して、私は、航ちゃんに駆け寄る。

「ランニングなんて嘘でしょ?」

「…ここまで来たならわかってんだろ。」