荒木
「この俺に越えられない壁は無い!」

谷口
「いいから早く行けよ、怪しまれるだろ!」
 
 荒木は壁をよっこらせと越えて向こう側に降りた。
 
 ジャリっと砂利の音が鳴る。

谷口
「どうだ体は?以上は無いか?」

荒木
「何とも無いって平気」

谷口
「ならば良し!じゃあ帰るぞ」

小山
「何でよ」

谷口
「3日は間を空けてみないと怖いだろう?呪いとか」

小山
「友達ちゃうの?」

谷口
「奴はゼロ、隊員で俺は隊長だ!

 隊員は隊長の為にある!

 民衆はブタだ!」
 
 私は谷口をほったらかして境内に入った。
 
 神社特有の涼しい風を感じる。

小山
「涼しいって寒い?」

谷口
「神社や寺ってのはアスファルトじゃないからな。

 土の上に砂利を敷いてるから涼しく感じるのさ、決して霊気とかじゃない。

 霊気とかじゃないはず」

荒木
「砂利は侵入者の足音を警戒する為にも使用されるのさ」

小山
「ねえ、可愛い警戒者がいるんだけど」
 
 私に言われて二人が見ると、そこに小さい女の子が三人を見て固まっていた。
 
 オカッパでボロボロの服を着た少女に三人は同じ様に氷ついた。
 
 絶対に普通の子ではない。
 
 ドラマの撮影で無い限りは…
 
 神社特有の建造云々の寒さではない寒気を感じ、本能で恐れを感じた。

 しかし相手は子供。

 私は裏返りながらも必死で声を出した。

小山
「こっこんにちは?」

谷口
「やっやっ」

荒木
「くっクッキー食べるかな?」

小山
「馬鹿!」
 
 少女が近づき、三人は息を飲んだ。
 
 荒木が特攻しクッキーを差し出し、それを少女は何も疑わず口にした。

 少女は何の警戒もせずそれを口にすると目を輝かせて笑った。

少女
「うっまー、母ちゃん母ちゃん」
 
 少女は走り出した。

谷口
「ヤバいぞ!逃げよう!」

小山
「あれはヤバい!ヤバすぎる」

荒木
「座敷わらしかもよ?

 クッキーのお礼に何か貰えるかも」

谷口
「母ちゃんとか言ってたろ!

 妖怪じゃなくても、どっちにしてもやばいだろ!

 勝手に入ると普通どうなる!」

小山
「私知らないもう逃げよ」
 
 見たこともない神社にこの時代に不釣り合いな少女。
 
 三人は今までした事の無い程の顔をして逃げ出そうとした。

「いや、人間やー」

 その言葉に三人の好奇心が恐怖心に勝ってしまった。
 
 恐る恐る振り返るとそこには笑顔の素敵なの女性が立っていた。
 
 普通なら品行方正な高校生らしく挨拶するのだが、頭に目がいって離せない。
 
 私は思わず叫んでしまった。

小山
「つっつっつの、角生えてるーーー!」

谷口「ひょーーえーーーーー!

 南無阿弥陀仏!
 悪霊退散!
 ハレルヤザビエル!
 南無八幡大菩薩!
 神様、仏様、天照様!
 イエス!キリストー!」
 
 谷口は取り乱す限り取り乱してお菓子のピーナッツで結界を張った。
 
 少女はそれを拾い上げ食べている。

角の生えた女性
「これっ拾い食いしな、やらしい」
 
 二人は腰が抜け座りこみ、谷口は気を失い倒れた。