アヤメさんの髪には妖力が宿っているので私の霊感が上がり、見えなかった朧車を見ることが出来た。
 
 骸骨の牛に引かれたボロボロの車には大きな女の顔が付いていた。
 
 その女は何かお経のようなものを歌ってるのが聞き取れる。

 恐れくこれが耳鳴りの原因だったのだろう。

 アヤメさんとタタミちゃんが住む鬼社は外からでは中が見えないので、朧車は急に出てきた私達に驚いた。

朧車
「ぴょー」

小山
「朧車さんですね?」

朧車
「ああー!やっと話せた!」

谷口
「何故俺達をつけ回す?」

朧車
「ええ、ええ説明しますとも喜んで」

荒木
「フッフレンドリーだな?」

朧車
「わたくし、ツクヨと申しまして…」

 ツクヨこと朧車は歌詠みの会、いわゆる俳句の会に出席する道の途中でいい俳句を思いついたという。

 しかし悲しいかな結びの句を度忘れ、夢中になりすぎて橋から川に転落してしまったという。


小山
「何故川に?」

ツクヨ
「川に月が移っていたので、ついつい手で掴もうと」

荒木
「まぬ…いやー無念ですね」

ツクヨ
「ちょうど月の詩を読んでいたもので、着物も重く、しかし川底から見上げる月の美しさと言ったら」

小山
「それで何故私を?」

ツクヨ
「いえ、恐らくあなたのお父上様であられる殿方が気になりまして」

小山
「父さんを?」

谷口
「妖怪に見初められるとはな」

ツクヨ
「いえいえ、そういう意味では無く。
 
 貴方のお父上様が酔っておられる時に歌っている歌が気になりまして」

小山
「歌?」

ツクヨ
「ごほん!では失礼して…

 月が~でたでった~

 月が~あでた…この後いつも

「誰か続きを歌え!」

 っとおしゃられてまして」

小山
「それが気になって?」

ツクヨ
「恥ずかしながら先日は我慢できずに門を叩きました」

谷口・荒木
「あっよいよい!」