マンションの外へ出ると、3月の風が容赦なく吹きつけブルッと身を縮める。 しかし心は何となく温かい気持ちになっていた 。 「行ってらっしゃい、なんて誰かに言われたの久しぶり……」 思わず顔が緩み、ハッと辺りを見回すと通り過ぎたおじさんが怪訝そうな顔で先を行った。 気持ち悪い奴じゃん…… 気持ちを払拭するため、咳払いをしてお弁当箱と一緒に渡された駅までの地図と、千尋の連絡先を見つめる 「桜井千尋……って時間!遅刻!」