俺はまるで聞く気はなかった。 だから、背を向けたままにした。 けど、女は、別に俺に告る、とかそーゆーのじゃなかった。 「今朝は、ありがとうございました!」 …は? てっきりいつもみたいに告られるだけかと思っていた俺は、目を見開いた。 そんな俺の後ろ姿を、多分見ているんだろう。 それでも構わず女は続けた。 「あの、あたし助けてもらったとき、片桐くんのこと知らなくて、お礼遅くなっちゃって…」 「ふぅん…」 どういう心境の変化かわからない。 俺はその女の方へ向き、歩き始めていた。