ピタッ…
あたしと、その人の手が重なった。
上から乗ってしまっているあたしの手は、あたしが重ねたように見える。
「す、すみませんっ」
あたしはパッと手を離すと、その人はちょっと微笑んだ。
「大丈夫。ってゆーか、あんた、ここのお嬢様?」
「…え?あ、はぃ…」
いきなり初対面の人に答えちゃっていいのかな…とは思いつつも、あっさり返事をしてしまっていた。
「ふぅん…そーなんだ」
あたしがお嬢様と知ってもなお使い続けるタメ語は、あたしより年上の自信でもあるのだろうか。
「お嬢様って、やっぱり敬語なのか」
軽く笑われて、その男の人はバイクにまたがって、隣の家、その隣の家。と、新聞をポストへいれていった。
あたしはその後ろ姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。