「なぁ。。。もう翔も、中学2年生なんだし、言ってもいいと思うぞ?」

あれ?!お父さん?もう起きてるの?いつもなはこの時間は余裕で寝ているのに。

「なに?なんかあったの?それって、昔の話?」
私はお母さんとお父さんの考えていることが知りたかった。
力になれるかもしれないから。

「ぅ。。。うん....」

お母さんが泣きそうになりながら言う。

「なぁ。翔。たしか、小学生の時、名前の事で、男子からからかわれてなかったか?」
いきなりお父さんが聞いてきた。
「あー。うん。クラスに翔くんがいたからね。でも、今は、からかわれないよ。自分の名前は好きじゃないけど。まぁ、からかわれない分全然いいよ。」

「そっか....
翔....落ち着いて聞けよ。そこに座りなさい。」
私、何が起きてるのか分からなくてずっと立ちっぱなしだったんだ....
「うん。
改まってなに?」
「お父さん、お前の名前、大好きだぞ。」
「私は好きじゃない。男の子っぽいし。」
「そうだよな。男の子っぽいよな。だって、その名前、男の子が付けたからね...」
「男の子...????」
「やっぱり、言わない方がいいんじゃ...」
お母さんが泣きながら言う。

「翔。お前にはお兄ちゃんがいた。」
「え?お兄ちゃん?」
「そうだ。5歳の時に死んだ。その時、お前はお母さんのお腹の中にいた。」
「ぇ...なんで死んだの?」
「筋ジストロフィーという病気だ。
だんだん筋肉が衰えていく。それで死んだんだ
。」

「ちょっと待って。意味不明なんだけど。お兄ちゃんいたなんか聞いてない。」
「......いいから最後まで聞けよ。お前のお兄ちゃんは、弟か妹が欲しいって言ったんだ。だから、翔を授かったことを話すと、すごく喜んだ。
『僕、弟か妹に絵本作ってあげる。まだ産まれたばっかりだったら読めないから僕が変わりに読んであげるんだ。』
って、言ってたんだ。まだ覚えたてのひらがなを一生懸命書いてた。
それでな、お前の名前はお兄ちゃんが考えたんだ。
『名前は翔がいい!弟でも妹でも。
たしか、翔っていう字、はばたくって読むでしょ?この前お母さんが教えてくれたんだ。 だから、翔がいい。
僕は、もう歩くことも走ることもできない。
だから、弟や妹には思いっきり走り回ったりして欲しいんだ!はばたくように、たくさんいろんなところに行って、たくさんいろんな景色を見てほしい。だから翔がいいんだ!』って言ったんだ......。
それから...もうすぐお前が産まれるかもって時に死んだ.........
最後の最後まで...お母さんのお腹の中さすって...
『元気に生まれてくるんだよー!
待ってるからねー!』
って、お前のことずっと気遣ってたんだ。。。
最期くらい、自分の心配してればいいのに.........
それで、今日はお兄ちゃんの命日なんだ。
お前に内緒にしてたが、お父さんたち、お墓参りに言ってたんだ。。。」

さっきまで冷静に話してたお父さんが泣き出した。そして、絵本を取り出した。
『かいじゅうくんとこねこちゃん』
ぼくはかいじゅうだ。 がおー。
そしたら、こねこがにゃー。 ってないた。
ぼくはみんなからこわがられる。
つよいから。おおきいから。 でもこねこちゃんはいつもいっしょなんだ。
ぼくはおそらにぼうけんにいった。
こねこちゃんもついてくる。といったけれどぼくいおいはらった。
かえってこれなくなるかもしれないから、こないで。
といった。
ぼくはおそらのうえでもたのしいよ。
こねこちゃん。おそらからみてるからね。
おしまい。

可愛いイラストと、下手くそな字で書かれている。 もしかして、子猫って私...?怪獣はお兄ちゃん?
そう思うと泣けてきた。
見たこともない、話したこともないお兄ちゃん。
だけど私のお兄ちゃんなんだ。
「今からお墓参りに行く。」
お父さんが言った。 私もついていこう。
お兄ちゃんに会いにいく。