例え、この声が届かなくても…。


『まぁ、どうせまた、中村くんの事考えてんのかと思った。』

中村くんとは、中村秋輝(なかむらあき)

『秋輝の事なんて考えてないよ。大丈夫だょ。』

『結愛!お願いだから。もうあんな事はしないでね…。』

『うん。大丈夫だよ。しないから。大丈夫。そろそろお風呂にはいるから、また、明日。』

私は半ば強引に電話をきった。

確かに、秋輝の事は考えてた。

でも、これ以上秋輝の事考えてたら、私は私じゃなくなる。

「よし!お風呂入ろ!」

私はお風呂にはいる事にした。

私はお風呂に入りながら、ふと、自分の左手首の傷を見た。大丈夫。もう、しないよ。

私はそう心に誓って、お風呂を上がった。