「…雨か。」

先程から
ため息をついてはこの台詞を
延々と繰り返している。

薄黒く染められた空を見つめながら
またりんは深ーーいため息をついた。

「風雅様。」

ふすまの向こうから隼人の声がする。

「…何だ。」

そっけなく返事をすると
隼人が寂しそうに笑う。

「部屋、入るか?」

`どうせ暇なんだろう'
と 付け足す。

「失礼します。」

遠慮がちに入ってきた彼を見て
柄にもなく少し心配になる。

普段の あの強引さはどうした
と 直接 言ってやりたい。


雨が強い。

(新選組の皆はこんな日でも巡察しているのかな。)

りんは雨に打たれている彼等を想像すると、
悲しくなってきた。


「…隼人。…もう少し此処にいてくれ。」

そう呟き彼女は横になると眠りについた。


「…はい。」

隼人の声は雨の中でも
広い部屋に凛と響きわたった。