夕暮れ時。
壬生寺の桜の木はいっそう美しさを増す。
風に舞い、
静かに散る姿は純粋に綺麗だった。
2人は言葉が出ないまま、ただ立ち尽くす。
しばらくして遠くから声が聞こえてきた。
「おぉっ!…2人で何やってんだよ。」
永倉と原田だ。
「何?2人でお花見?…俺も混ぜて~!」
藤堂が跳ぶように来る。
それに続いて
近藤や山南、斎藤、沖田が来た。
「「う゛……っ。」」
りんと土方の声が重なる。
顔を見合わせ、小さなため息をつく。
内心
`今日は静かに桜を見たかった'
と思っている。
「鬼副長が抜け駆けですか…?」
沖田が土方をからかう。
「違う…!」
「本当ですか?」
否定する土方に追い討ちをかける。
話すのを止めようとしない沖田を睨み、
土方は刀の鯉口をきる。
「…もぅ、怖いですねー、副長は。」
そう言いながらりんの後ろに隠れる。
「ちょっと総司。…私を盾にするな。」
すると沖田は
りんの言葉を無視し話し始める。
「ところで、りんさん…今日はどうして着物なのですか?」
「あぁ、これは……
言ってから
もう一度 着物に目をやり
恥ずかしそうに目を細める。
「恥ずかしがる事はない。」
そんな彼女を可哀想に思ってか斎藤が庇う。
「まぁまぁ、そんな事よりお花見お花見ー!…今日はりんちゃんもいる事だし!」
永倉が騒ぐ。
(…何でこんなことに。)
りんがため息をつくと
「…ため息つくと幸せが逃げるぞ。」
と藤堂が言う。
(いや、貴方のせいでもあるからね。)
と言いたかったが
誰が何とか
そんなのはもう どうでもよかった。
「じゃぁ、酒 取りに行かねぇか。」
「うん。」
軽く返事をして
藤堂についていくりんであった。
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