世界は私達に優しくない



「舐めても、いいんだよ?」

「……」

「美味しそうなんでしょ? それで喉の渇きを潤したいんでしょ?」

「っ、は、ぁ…」


リズシアの言葉一つ一つに凌空の様子も変わって来る。ゴクッと喉を鳴らし、渇いた唇を舌舐めずりをし、赤い瞳は期待で輝き始めた。

その凌空の姿に由希は、また突然現れたリズシアに辞める様声を掛け様と口を開くが、口は言葉を紡ぐ事はなく、ただ声にならない息を吐き出すだけ。


「ほら…たんとお舐め――?」


それが合図となり、凌空は由希の手を力任せに引き寄せ血の滴る手の平にかぶりついた。

手の平に舌を這わせ、傷口を抉る様に舌を押し付け、滲む血も全て舐め取って居る。

その姿はまるで…腹を空かせた獣が獲物に食らい付く様だ。

一滴も逃さぬ様手の平に舌を這わせる凌空のその異常な姿に、目の前で目の当たりにした由希は無であった。

何を思うでもなく、ただただ傷口を抉る舌に痛みを感じ、ただただ手の平を一心に舐める凌空を見下ろすだけ。