さっきとは明らかに変わった様子に、由希は嫌な予感がした。
「は、ああっ…」
溜め息混じりに発せられた声。
赤く染まる瞳は熱に犯された様に、熱を持ち惚けた表情で、血の流れる手の平に釘付けになっている。
それは何処か恋い焦がれる人を見つめる瞳と同時に、飢えた獣の様だった。
「り、くっ。いたっ、離、して!」
手首が鬱血し始める程強く掴む凌空の手を離すよう悲願するが、そんな由希の言葉も既に届いては居ない凌空は、ゴクッと喉を鳴らし片時も血から目を逸らさない。
はっはっと、まるで犬の様な息遣いをする凌空の姿に、由希は言い様のない不安が膨らむのを感じた。
声を掛けても、名前を呼んでも、凌空の興味は由希に向かず、赤黒く流れる血を食い入る様に、その瞳に映すだけ。
そんな凌空を由希は見つめる事しか出来ず、その時音もなく、気配もなく、霧状に凌空の背後に現れたその男、リズシアは後ろから凌空の耳元に向け…
