世界は私達に優しくない

 
ヴァンパイアになりきったマニアなんじゃないかと、由希は密かに思っていた。

だがリズシアの不思議な雰囲気も、突然音もなく部屋に居る理由も…由希には説明がつかない。


「それが荒川凌空にとってはキミって訳。今は必死に押さえているみたいだけど、それも何時まで持つのかね?」


くすりと笑って由希を見つめるリズシアの瞳には、困惑した顔の由希が映り込んでいた。


「言っとくけど、人間は絶対にヴァンパイアフィリアには勝てない。どんなに理性で耐え様と、本能に勝てる人間なんて無に等しいんだからね?」

「っ、でも…!」


凌空はそんな訳ないと、由希が口を開きかけた瞬間、目の前には妖しく微笑んだリズシアの顔が迫っていた。


「そんなに信用出来ないなら…本人の所に行って来たら?」

「え…」

「きっと――面白いものが見れるかもよ?」


耳元で囁くリズシアの言葉に、由希は目を見開き、息つく暇もなく部屋から飛び出した。

残ったリズシアの顔には、妖笑がうかんでいた。それはリズシアの狙いか偶然か、誰にも分からない。