月がとっても

◆◇◆


いろいろ夜店を見て回わり、最後にあの駄菓子屋のおばさんが出していた屋台でラムネを2本買って家に戻ることにした。


遠ざかる祭り囃子を聴きながら歩く帰り道。

カラン コロン カランと、いつのまにか安定してきた神崎の下駄の音が心地良い。



遠くの空で打ち上げ花火が見えた。
綺麗だった。

この辺で花火大会の予定はないから、誰かが打ち上げているのだろうかとぼんやり考える。



くらげのような小さな花火は、空に上がってすぐに夜に溶けた。



神崎は空を見ながら「きれい」と小さく呟く。


「今度、うちでもするか?花火」

「え? いえいえ、そんな、ご迷惑では」

「まさか。沙織さん喜ぶんじゃないかな」


慌てて首を横に振る神崎にそう言うと、彼女は少し迷ったようだったが、こくんと恥ずかしそうに頷いてくれた。



「花火だけじゃなくてさ、またいつでも家に来いよ」



ギターを弾きに。


……いいや、ギターだけじゃない。

なんでもいい。本を読みにきても、星を観にきても……、

理由なんてなんでもいい。



とにかく、

神崎にまた会いたいと

そう思った。





「……ありがとうございます。

私も、先輩とまた会いたいです」