月がとっても




「本当です。私、先輩と出会えて良かったです。

先輩が宇宙人と言うなら、私はいつも本を読んで、宇宙旅行をして会いに行きたいです」


またそんなことを、この文学少女は恥ずかし気もなく口にする。

こっちの気も知らないで……。




神崎の言葉に、体中が熱くなる。
胸の奥のほうがぎゅうっと締め付けられるような感覚。

嬉しいはずなのに、泣きたくなるのはどうしてだろう。



「神崎……」


キラキラした眼をして俺を見上げる神崎に、持っていたドラミちゃんのお面をかぶせた。

きっと、俺は今とても恥かしい顔をしてるに違いないから。



「わっ、先輩やめてください。なにも見えないんですからっ」


お面をかぶった神崎が、慌ててそう言う。どうやら目の穴の位置が合わないらしい。



(そうか、見えないのか……)




そう思ったと同時に、

俺はドラミちゃんに、キスをした……。



そっと触れて、

すぐに離した。



それだけの動作に、手が、膝が、馬鹿みたいに震えて、理由なんてわからないのに泣きそうになった。






「先輩、今なにか……」


「なにも、」




墓まで持って行く秘密が、

ひとつできた。