月がとっても




「……あぁ、久しぶり」


作り笑いはできているだろうか、神崎に気づかれてはいないだろうか。

ただそれだけを考えた。



しんと、ここだけが静かになったような気がした。祭り囃子や祭り独特のざわめきに満ちているはずなのに、どうしてか雑音が耳に入ってこない。


「……なあ、その目、今でも変わらないのな」

そんな風に俺の顔を覗き込んでいやらしく笑う。その言葉に、嫌でも思い出される。昔の、あの日の言葉を。


「えー、なになに?」取り巻きのような女の子がそう興味津々そうに声を上げた。


やめろ。
そう言いそうになったその時、


「見ろよ、コイツの目。

宇宙人みたいで気持ち悪いよなって」


そう言ってそいつは俺の目を見てまた嘲笑った。




……ああ、また。

どうして、言われたくないことを、言ってほしくない人の前で言うんだろうか。



今更、もうこんなことで傷ついたりはしないけど、それでもやっぱり嫌だった。