月がとっても

◆◇◆



カラン コロンと、下駄が鳴る。


沙織さんに見送られて家を出た。隣を歩く神崎は綺麗な浴衣姿。

濃紺のとても落ち着いた色。帯は黄色。どれも神崎にとてもよく似合っている。



足下はおぼつかないようで、カラコロと不規則に鳴る下駄の音は、聞いててこっちの方が心配になってくる。

それほどに、拙く歩く神崎の姿は危なっかしい。


「ん」

「先輩?」

「手、繋ぐか?なにかに掴まってた方がまだ少しは歩きやすくなるだろ」


そう言って手を差し出すと神崎は一瞬戸惑ったように固まった。

そして……、



「お借りします……」


恥ずかしそうにそっと差し出された小さい手をとる。

離さないようにしっかりと握った。




くすりと神崎が笑う。


「なに?」

「昔、お兄ちゃんにも同じことしてもらいました」


懐かしそうに神崎はそう話した。



(お兄ちゃん、ね……)