月がとっても



放課後。

音楽室でギターを触りながら、その"宇宙旅行"の話を神崎とした。



「プリントに、"本は宇宙 読書は宇宙旅行"って書かれてて……なんだか先輩の家で見たプラネタリウムを思い出してしまいました」

どうやら神崎のクラスでも読書感想文の説明があったらしい。


恥ずかしそうにそう話す神崎に、「俺も」と頷くことは、なんだか照れ臭くてできなかった。


国語の担当が同じなため、学年が違っても読書感想文という課題は同じ。こんな風に神崎と共通して課題のことを話すのは初めてで、不思議な感じがした。




「宇宙旅行って、なんだか壮大ですね。思いもしませんでした」


「あの先生って重度のロマンチストだよな」


思わずそう漏らすと神崎が小さく笑った。



「……これまで私は、読書は "宇宙旅行" と言うよりは、"会いに行く" って感覚でした」

「会いに?」

「はい。本を読めば、登場人物に出会えますから」



"本を読めば、

誰にだって会える"


神崎がそんな風なことを言う。なんだかだでこの文学少女も重度のロマンチストだ。