月がとっても






「……やっぱりすごいよ、神崎は。いろんなこと知ってる」

「いいえ、そんなことは……。それに、勉強の方は全然ですから」



そう言って神崎は控えめに笑った。


「期末試験も……先輩に大丈夫だって言ったのに、いっぱい勉強したのに、全然出来なくて……」


顔はよく見えなかったけど、少しだけ神崎が泣いているように思えた。

駅で見た泣きはらしたような赤い目のわけはこれかと考える。




「私は……自分が情けなくて、消えてしまいたくなります……」


「……」


天の川を眺めながら、ぽつりぽつりと淋しい言葉を零す。俺はすぐに言葉を返してあげられなかった。なんと言えばいいんだろう。なんと答えれば神崎は泣かないでいてくれるんだろう。


気のきいた言葉も、神崎が欲しがる言葉もわからなかった……。




「すみません、こんなこと話してしまって……」


少しの沈黙の後、神崎はそう言って無理して明るい声を出した。




「俺は……、

神崎が居なくなったら寂しいよ」


「……え?」


「寂しい」


もう一度呟くと、神崎がそっとこちらを振り向く。微かな星明かりに照らされて見えた睫毛が少しだけ濡れている。

神崎の濡れた睫毛から目が離せなかった。壁も天井も綺麗な星が巡っているのに、もう目には入らなかった。



「神崎は……?

俺が居なくなったら神崎はなんて思う?」



「……私も、寂しいって思います。

あと、きっと泣いてしまいます」


「神崎はよく泣くからな」




そう言って笑いながら神崎の少し乱暴に頭を撫でると、小さく鼻をすする音がして、それから少しだけ神崎も笑ってくれた……。