月がとっても



星を観に行こう。そう言うと、神崎は不思議そうに顔を上げた。



「でも、今日は雨で……」


「うん。だからプラネタリウムで。

科学館のみたいに立派なもんじゃないけど、家にもあるんだ……」


「先輩のお家にも……?」


「そう」


俺の親父は新しいものとか珍しいものが好きだ。珍しい家電製品とか、面白い玩具とか。少し大きめの家庭用のプラネタリウムもそのコレクションの一つだ。

今は屋根裏の物置に置かれたままで箱には埃がかぶっているだろう。まだ壊れてなければいいけど、とこっそり考える。



「……神崎がよければだけどな」


「いえ、観てみたいです」



そう言って今度は神崎が俺の腕を掴んだ。
子供みたいなその仕草が可愛くて、空いてる方の手で神崎の頭をぽんぽんと軽く撫でる。

そうするといつもなら子供扱いに不服なように唇を尖らせる神崎だけど、どうしてか今日はされるがままだった。



(甘えられてんのかな……)


ふとそんなことを考える。
自惚れでもなく、本当にそうだったらいいのにと、少しだけ思った。