月がとっても




「でも、今日、木曜日は科学館お休みなんですよ」

「……そうなのか?」


言われてポスターを見返すと、確かに毎週木曜は休館日だと書かれている。
せっかく神崎の気が紛らわせるかと思ったのに。

そう思ったのが伝わったのか、神崎がにこりと笑った。



「大丈夫です。ご心配おかけしてすみません」



そう言って神崎は立ち上がり小さく頭を下げる。
それと同時に、電車の来る音が聞こえた。駅のアナウンスが流れ、騒音が響き渡った。

ホームに滑り込んできた電車が止まり、ドアが開く。


「それでは、また……」

そう言って電車に乗ろうとした神崎の腕を俺は引き止めるように掴んだ。



「……せんぱい?」


神崎が驚いたように小さく声を上げる。電車のドアが閉まる音。神崎が慌ててそちらを見るけれど、手は離してあげられなかった。


腕を解放してあげられたのは、電車が行ってしまった後だった。



「……ごめん」

「いえ」



その場に立ち尽くしたまま小さく謝ると神崎も小さく返事をした。


なんとなく気まずい空気が漂う。少しの沈黙のあとに俺は思い切って声を上げた。




「あのさ、

やっぱり星観に行こう……!」