期末試験にさしかかり、放課後のギター練習も一時中断することにした。
図書委員での仕事の最中にそれを伝えた時、神崎は頷きながらも心底悲しそうな表情を浮かべた。 その表情にこちらも胸が痛む。
「……試験が終わったら、また練習見てくれますか?」
「ああ。もちろん」
控えめに言う神崎に、当たり前じゃないかと力強く頷いた。
けれど、神崎はそれでも悲しそうな顔のまま。
「でも、私、全然上達も出来なくて、本当にへたくそで……」
悲しい顔の原因はこれか。
神崎のギターの練習は始めてもう3ヶ月近く経つ。3ヶ月経つけれど演奏の方は、確かにお世辞にも上手いとは呼べない。そのせいで愛想を尽かされたとか、そんな見当違いな不安を抱いているのだろう。
「そんなことない」
神崎の言葉にそう返した。
柔らかかった指先は、傷つきながらも以前よりずっとずっと固く強くなった。指だってちゃんと開く。コード間違えもほとんどない。
その全部が神崎の努力の証だ。
今はまだ自信がなくて、すぐ指がもたついてしまうけれど……それさえなくなればきっとすぐに上手くなるだろう。
「テスト終わったらさ、思いきり練習しよう」
そう言うと、神崎がやっと笑ってくれた。