月がとっても



その週の金曜の夜。
朔の家へ泊まりに行った。


朔の家はうちとは対照的に、洋風の小綺麗な家だった。赤い屋根。綺麗なガーデニングに、庭に小さなブランコとか……。


母さんの趣味なんだろうなと思って、少しだけ苦笑い。



「友達が泊まりに来るって言ったらね、母さんが焼いてってくれたんだ」

家に上がると朔がコーヒーを煎れてくれて、それと一緒に大きなブルーベリーパイが出てきた。



「これ……」


大きなブルーベリーパイ。
母さんの得意料理の一つだ。


けれど、母さんの料理と言えば……



「すごく不味かった覚えがあるんだけど……」


「今でも不味いよ」


朔はそう言って笑いながら、ブルーベリーパイを切り分ける。


「大きい方は望にあげるよー。お兄ちゃんだしね」

「おい、ばかっ!やめろ、こんな時だけ兄貴扱いすんな」


そんな風にふざけ合って、笑い合って。
母さんのブルーベリーパイの味は相変わらずで。


夜には二人でカレーを作ったりして、少し辛いカレーを汗かきながら完食したりした。


おかげで、結局テストの勉強はまったく出来なかったけど。


……それでも、まぁ良いかと。

そう思えるくらい楽しい夜だった。