月がとっても




「亮佑は、とっても頭が良くて、あと運動神経も良くて、とにかくすごい奴なんだ。

ちょっと無愛想だけど、すごく面倒見がよくて……」


そう話す朔の言葉に、彼が神崎の兄なんだろうと思った。以前、神崎が語ってくれた兄の話とよく似ていたから。



紙の上に描かれた彼の姿を見る。

真っ黒な髪は似ているかな。それ以外はあまり神崎澪と似てるとは思わない。特に目が。神崎亮佑の目はどこか力強い。それは、目力というよりかは、意志の強さの現れのような気がした。




「瑞樹もね、女の子だけど亮佑と同じくらいかっこいいんだよ」


そう言って、朔が雨宮瑞樹という子のことも話し出した。

描かれた姿を見る限り、とても綺麗な子だと思った。大人びた表情に、中性的な顔立ち。朔の言うかっこいいという言葉が不思議と似合ている、



「好きになっちゃ駄目だよ」

なんてふざけたことを朔が言う。


「ならないよ。

朔は、この子が好きなのか?」


そう返した俺の言葉に朔の顔が熱を散ったように赤くなった。

それから少しの沈黙のあとに、

「……そうだよ」と、顔を逸らして朔が言う。


「でも、瑞樹は亮佑のことが好きだから」


そう言って朔が少し笑う。