月がとっても




「まぁそう怒るなよ、俺だって宇宙人みたいだって言われたことがあるよ」


「宇宙人?」



小学生時代の思い出話を聞かせると、神崎は興味深そうな表情で顔を上げた。


"宇宙人”と呼ばれたのは小学4年の時だった。

俺は所謂ハーフというやつで、異国の血が半分混じっている。顔もよく見ればハーフだとわかるような顔だ。

瞳の色が黒にグリーンが混じったような色をしていて、このグリーン色が宇宙人と嘲られた由縁なのだ。



「私は、先輩の眼、

とても綺麗だと思います」


俺の話を聞いた神崎は、なんてことない風にそう口にした。


まるで、海や月が綺麗とでも言うようにごく自然にそう言ったのだ。

それがあまりにも純粋に言うものだから、自分の緑色の眼があまり好きではなかった俺はなんだか照れ臭いような嬉しいような感じがして、心がざわついた。


気恥ずかしさを隠すため、眼鏡をほんの少し直すふりをしてレンズ越しに見える神崎の澄んだ眼から視線を逸らした。



その時。

タイミングよく下校を促す放送が室内のスピーカーから聴えてきて、彼女に気づかれないようにほっと息を吐いた。