月がとっても



俺は、自分の眼鏡にそっと触れてみた。

俺は俺が嫌いで、自分らしくありたいと思いながら、いつも自分を隠して生きてきた。緑の眼はこのレンズに隠して、前髪で覆ったまま。誰にも見られないように。見つからないように。ずっと隠して。


髪を切ったことで、少しは前に進めるだろうか。

黒沢みたいになれるだろうか。


今はまだ無理かもしれない。


それでも……



『先輩の眼、とても綺麗だと思います』


ああ言ってくれたあの子に、ありがとうと笑って答えてみたかった。