月がとっても



額を合わせて、朔が笑う。

鼻にかかる吐息がくすぐったくて、居心地が悪くなる。



「やめろよ、もう子供じゃないんだから。入れ替わりなんて出来るわけないだろ」


そう言って朔の顔を押しのけて、起き上がる。

朔は名残惜しそうに体を離した。


「えー、絶対出来るよ。体格もそんなに違わないし、僕が髪黒くして望が前髮切って髪型合わせたら絶対いけるのに」

絶対絶対と繰り返す言葉。
どこからそんな自信が沸いてくるのか、朔はそう俺に説得する。


確かに子供の頃はよく朔と入れ替わって遊んでいた。学校の友達も先生も両親でさえも気付かれたことは一度もなかった。


けれど、今は違う。


学校も違う。

友達も違う。

置かれた環境も、言葉遣いも、なにもかも俺と朔は同じじゃない。


ましてや、朔の通う学校はこの辺りでは名の知れた進学校だ。そんなところへ朔に為り変わって行けるわけが……、



いや、まて。


朔の通っているその学校て、確か……