月がとっても




……下校時刻になり、学校をあとにした。ジリジリと何処かで蝉が鳴いているのが聴こえる。


まだ6月だというのに真夏日のように、空はまだ少しだけ青い。

今日は風が強いのに、空気がとても蒸し暑い日だ。



あまりにも暑かったので、帰路の途中にまた神崎とあの駄菓子屋に寄り道をした。

今日買ったのはラムネを二本。


深緑色の瓶を見て「先輩みたいですね」と神崎が言う。

ラムネのガラス玉を落として開けてもらい、店のおばさんに小さく会釈して店を出る。 店の外は夕陽が眩しくて眼がくらみそうだった。




道路に出たところで瓶に口をつけた。

しゅわしゅわと炭酸が音を立て、跳ねる泡が喉に痛いくらいだ。強すぎるくらいの刺激に思わずぎゅっと眼を閉じる。

からんと、瓶の中でガラス玉が寝返りをうつ。



「まるで星が降る音のようですね」と、

神崎は詩人のようにそんな言葉を口にする。


この文学少女は、時折そんなことを言っては俺を困らせる。



その時、風が強く吹いた。



「すごい風……」

「夕立になるかもしれないな」


空を見上げれば、大きな黒雲が遠くに見えた。