月がとっても



「なにー?僕のこと忘れてた?」

「ばかっ、そうじゃない。 てか、どうしてここに……」

「調べたんだよ」


まだ混乱する俺に対し、弟の朔は落ち着いたようにそう答えた。


「5年もかかっちゃったけどさー、まさかこんなに近くに居るとは思わなかったよ。

僕ね、ここから電車で20分のところに住んでるんだよ。」

「……近いな」


電車で20分。
その距離の近さに驚いた。


……もう、一生逢えないんじゃないかって、思っていたから。


それが、20分か。たったの。


「ね、近いでしょ」

朔がなんだか得意気に笑う。
つられて俺も笑った。



……互いの笑いの波が引いた頃、

朔はこれまでの苦労を俺に向かって語り出した……。


出会う人に必ず「僕の顔知らない?」と尋ねたそうだ。
同じ顔の俺を探すために。


「小学校は児童会長で、今の中学では生徒会長してるんだよ。とにかく目立つことをして僕の顔を広めたかったんだ。そうすればきっと望が見つかると思って」

「そうか……」


「でもなかなか見つからないわけだよね、望変わってるもん」


そう言って朔が手を伸ばす。
静かな動作で俺の前髪にをかき分け、眼鏡を取り上げた。


「前髪長すぎだし、眼鏡もださくない?」

「……」


よくもまあ、人のコンプレックスを隠す努力をずけずけと指摘するもんだ……。

しかし、変わったのは朔の方だってそうだ。


地毛じゃない明るい金髪。
性格も。


あの泣き虫のおどおどしたやつが、こんな風に変わっているなんて誰が想像つくのだろう。