月がとっても

◆◇◆

「お帰りなさい、お部屋にご友人をお通ししていますよ」

「神崎?」


家に帰ると出迎えた沙織さんの言葉にきょとんとなった。

先程神崎を送っていったところなのに、家に来る友人と言われて思い当たるのは神崎だけで、思わすそう聞き返してしまった。



「いいえ、神崎さんじゃございません。男の子ですよ。なんでも小学校のころの同級生だとかで……、月下さんと言う方です」

「つきもと?」


ますます心辺りが無くて困惑する。


「あら、心当たりございませんか?」

沙織さんが怪訝な顔をした。

不審者だのなんだの騒がれても面倒なので、「俺が忘れてるだけかも」と適当に答えて自分の部屋へ向かった。


いつもならぎしぎしと遠慮なく鳴らして歩く廊下も、少しだけ慎重に歩いてしまう。

灯りのついた部屋の前に立ち、深呼吸を一つ。

思い切って戸を開けると、



「おっかえり!望!」

ヘンな奴がいた。

誰だコイツは。部屋に入って思った第一印象はそれだった。
派手な金髪に、芸能人のようなサングラスを掛けたそのヘンな奴は、部屋にあった俺の漫画を勝手に読んでくつろいでいた。



「あっれぇ?反応薄くない?生き別れの兄弟の感動の再会なのに〜」

部屋に入れず立ち尽くす俺にそいつはへらへらと笑う。



「きょうだい……って、

お前、朔かっ!?」



俺の兄弟なんて、

生き別れた双子の弟……朔しかいない。