月がとっても



私は私が嫌い。

そう言って彼女は、自分のことも少しだけ話してくれた。


中学受験に失敗して家族を失望させてしまったこと、優秀な兄と比べてなにもできない自分がとても嫌いなこと。


そうぽつりぽつりと話す彼女は儚気で、今にもどこかに消えてしまいそうだった。

きっと神崎は自分なんて消えてしまえばいいと思っているのだろう。
ずっとそんな気持ちを抱えて生きてきた。

そうしていつしか、自分の存在を消すように過すようになってしまったのだろう。


幽霊のように。

だから放課後もずっと図書館に……。



(私は私が嫌い)

彼女のその言葉に、俺はそれまで神崎に感じていた不思議な共感の正体がわかった。

俺も俺が嫌いだった。要は似た者同士なのだろう。



つられて泣いた。空が。

ざぁっと、夕立のように雨が降り出した。通り雨だろうか。

開けっ放しにしていた窓から雨の匂いが届く。


「泣くなって」

「ごめんなさっ……」

「謝らなくてもいいから」

「はいっ」



泣かせるつもりなんてなかった。
神崎にはいつだって笑ってて欲しいから。




(自分らしくあれ)


口には出せなかったけど、そう思った。

あの歌に俺がそう励まされたように、神崎を励ますことはできばいいのに。