月がとっても



「澄行く水に秋萩たれ

 玉なす露は、

 ススキに満つ


 思へば似たり……」



歌の途中で歩道を渡りきってしまい、歌詞が途切れる。

神崎が名残惜しそうな顔をした。



「続き」

「ん?」

「続き、聴きたいです」



言われて、少し恥ずかしくもあったけれど、

神崎があまりにも純粋にそうせがむから、大きく息を吸った。



「澄行く水に秋萩たれ

 玉なす露は、

 ススキに満つ


 思へば似たり、

 故郷の野邊


 ああ、わが弟妹

 たれと遊ぶ……」



歌い終わると、神崎は嬉しそうな顔をした。

「その曲の歌を聴いたのは始めてです。そんな歌詞だったんですね」

「ああ。でも、もとはどこかの外国の民謡だよ」