神崎のギターがようやくましな音になってきた矢先、5月の連休が始まろうとしていた……。



休みに入る前日。

その日は図書委員の当番の日だった。


「休み、予定あるか」

返却図書を棚に戻す仕事の最中、そう問いかけると神崎は不思議そうな顔をしてふるふると首を横に振る。


「それなら……うち、来るか?ギター弾きに」


一瞬迷ったけれど、思い切ってそう言ってみた。

誰かを家に呼ぶなんて初めてだった。


年下で、ましてや女の子で。

断られるだろうなと思った。



「行きたいです!」

予想に反して神崎は元気よく声を上げた。


思わず笑ってしまう。


ほっとした。

あと、もっと警戒した方がいいんじゃないかとも思ったからだ。