ギターに触れる手の、柔らかさにびくりとした。


押さえる度に赤くなる指先に、自分よりも一回りも小さい手のひら。

左手の指なんか全然開かない。
基本のコードもまともに押さえられるかどうかだ。


自分で勧めたくせに、自分とはあまりにも規格が外れた女の子に教えることなんて出来るだろうかと不安になる。



けれども、

予想以上に神崎がとても熱心に取り組んだお陰で、そんな不安は杞憂となった……。



なんとか基本は覚えて、次は簡単なフレーズを弾いてみるところまで練習は進む。

ギターを抱える神崎はいつも不安そうで、一つコードを押さえる度に心配そうに顔を上げる。

「大丈夫」と頷いて答えると、自信を持って弦を弾く。





次のコードは結構難しい。
人差し指1本で1フレットをすべて押さえなければならないから、まだまともな音が出ない。

押さえるのにもたつくと神崎はまた泣きそうな顔をする。


「俺もここは苦手だった」と、昔のことを思い出して話すと神崎は不思議そうな顔をした。

「先輩でも?」

「ああ、けど練習したら簡単に出来るようになったよ」


神崎も同じようになるとは保証できないが、上手い励まし方もわからないからそのままのことを口にする。

それが伝わったのか神崎は小さく苦笑いをした。