「先輩のギターもっと聴きたいです、歌も……」


演奏を止めると神崎が遠慮がちにそう呟いた。



「神崎も、ギター覚えてみるか」

「いえ、そんな……」

冗談めかして勧めてみると、どうせ弾けっこないと俯きながら言う。


器用じゃないし、歌も歌えない。

そう零される言葉に、思わず眉をひそめる。あんなに興味津々の顔をしていたくせに。


「出来ないとか関係ないだろ、やりたいかやりたくないかで決めろ。弾きたければいくらでも教えてやる」

いささか熱っぽく語ってしまうのはどうしてだろう。



神崎の黒い瞳が揺れる。

彼女の長い睫毛が濡れたような気がした。


しまった、泣くか。

……泣かせたいわけじゃなかったのにと、すぐに自分の物言いに後悔する。


けれど神崎は震える唇を小さく噛んだ。

そして、


「弾いて、みたいです。……先輩みたいに、弾けるようになりたいです」


まっすぐに俺を見てそう言った。



「練習、してみるか?」


「はい」


もう一度神崎に問いかければ、今度は大きく頷いて。とても不器用に微笑んだ。