月がとっても



 祭囃子に、

 蝉の声、

 ギターの音、

 夕立の雨音、

 オレンジ色の廊下に響く音楽とか、


 『神崎は幽霊みたいだな』

 先輩の低く静かな声。


 からんと、

 ラムネ瓶の中でビー玉が寝返りをうつ。



からん、からん、と、星が落下してきたみたいに、様々な思い出が頭のなかを巡った……。


先輩と過した少しの時間。

特別なようで、いつの間にかそこに先輩がいることが普通になっていた時間。

なんでもない日常がただ幸せだったのだと、今になって気付く……。




……すると、

ぽたりと雨が降り出したように一粒の雫が図書カードの上に落ちた。鉛筆で書かれた先輩の名前が滲む。


それは、今までずっと零れることのなかった私の涙だった。


(どうして、急に……)

ずっと溜まってたかのように次から次へと涙が溢れて、零れて、止まらない。



(……もし、もしも、

先輩が、宇宙人だったなら……)


この文字の星たちの中に、先輩はそこに、いるのかな。置き去りにされてたように思えたその本は、私をここで待っててくれたのかな……。


そう思わずにはいられない。