月がとっても

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図書委員の仕事は一人になっても続けた。

放課後の図書室は、相変わらず誰も居ない。しんとした図書室で私はすることもなくカウンターの席にぼんやり座った。



夏目先輩と一緒だった頃は、もっと居心地が良かったのに……。


たくさんお喋りしたっけ。

ほとんど毎日たくさんのことを語り合った。


懐かしい日々の話とか、

ギターや音楽の話とか、

遠い国の映画の話とか、

大好きな小説の話とか……、



(そういえば、最近読書してないな……)


夏目先輩とのことを思い返しているうちに、ふとそんなことを思い出した。

先輩が亡くなってからは私はギターばかりに熱中していたから。教えられたギターの音を忘れないようにと、ただ必死に。読書の時間も削るほど……。



(久しぶりになにか読もうかな……)


そう思って席を立つ。

誰もいない図書室をゆっくりと歩いて回った。棚にびっしりと詰められた本の背を眺めながら、面白そうなタイトルを探す。



「……あっ、」


……ふと一冊の本が目に入った。

タイトルが気になったからじゃなくて、きちんと本と本の間にしまわれず、他の本たちの上に置き去りにされていたから。


(誰がこんなところに置いたんだろ。きちんと戻してあげないと……)


そう思って本を手にとる。