目が覚めると、もう太陽が昇っていた。
外からは蝉の音と子供たちの楽しそうな笑い声。
窓を開けると、輝く太陽と真っ青に澄んだ空。入道雲とか……、
見える景色の全てが、綺麗で、眩しく思えて、思わず眼を瞑る。
お腹にズキンとした痛みを感じて、慌てて窓を閉じてカーテンを引いた。
もう一度布団に潜ってぎゅっと眼を瞑る。
ズキン ズキンと、痛みは止まらない。
(夏って、別れの季節に向いてないな……)
眩し過ぎる夏の景色は、傷んだ心に寄り添ってはくれないから……。
ぼんやりとそんなことを考えた。
◇◆◇
無気力にただ時間を消費してしまっていたある日。
黒沢先輩が家に来てくれた。あの駄菓子屋さんのたい焼きを持って。
「澪、ちゃんとご飯食べてるの? 顔色もあまり良くないわ」
「あまり……食欲が無くて……」
そう答えると、黒沢先輩は少しだけ困ったような淋しそうな笑みを浮かべた。
「たいやき買ってきたの。澪と食べようと思って……」
黒沢先輩がそう呟く。
私が「食べたいです」と答えると、
「よかった」と安心したように小さく笑って、持ってきたたい焼きを一つくれた。
……たったそれだけのやりとりが、とても温かく思えて胸の奥がぎゅっと苦しくなった。